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東京地方裁判所 平成4年(ワ)22773号 判決 1997年11月11日

原告 甲野花子

右訴訟代理人弁護士 田中清治 飯田秀人 茨木茂 宇都宮健児 岡崎敬 勝山勝弘 川人博 小寺貴夫 小林政秀 近藤博徳 犀川季久 犀川千代子 齊藤雅弘 末吉宜子 芹澤眞澄 千葉肇 遠山秀典 永井義人 原田敬三 松岡靖光 村上徹 森田大三 横山哲夫 米川長平 安藤朝規 瀬戸和宏 澤藤統一郎 松澤宣泰 宗万秀和 安彦和子 上柳敏郎 小薗江博之 浅野晋 新井嘉昭 荒木昭彦 井口多喜男 今村核 今村征司 宇都宮正治 小野聡 加瀬洋一 紀藤正樹 坂入高雄 榮枝明典 櫻井健夫 鈴木理子 田岡浩之 竹内淳 長野源信 萩原秀幸 福永寧 南典男 村越仁一 森高彦 山岸洋 山口廣 山上芳和 石井恒

原告訴訟復代理人弁護士 渡辺博 木村裕二 谷合周三

被告 野村證券株式会社

右代表者代表取締役 氏家純一

右訴訟代理人弁護士 西修一郎

同 木村康則

同 清宮國義

右訴訟復代理人弁護士 本橋一樹

同 磯谷文明

主文

一  被告は原告に対し、金一一二八万七〇二六円及びこれに対する平成元年三月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求の趣旨

主文と同旨

第二事案の概要

一  請求原因

1  原告は、昭和一二年一一月四日生まれの女性であり、昭和二七年に中学を卒業した後、家業である農業の手伝いをし、その間、二年弱、村の農協で購買部の店員をしたことがある。昭和三五年に結婚してからは、夫である甲野太郎のタイル職の仕事を手伝いながら、主婦をしてきたが、現在、夫は末期ガンとなり、原告は清掃の仕事をして生活している。

2  原告は、昭和五四年九月ころから、老後の生活資金を少しでも増やそうと思い、夫の預金や自己の預金を使って株式投資を始めたが、信用取引や先物取引はしたことがない。

3  原告は、平成元年三月二日、新日本製鉄ワラント三四ワラントを一〇二六万三一五五円で買い付け、平成四年四月二八日、売却価格二二二二円で売却することとなった(以下、このとき買い付けたワラントを「本件ワラント」という)が、その経緯は、次のとおりである。

平成元年二月末、従前より原告の取引担当であった被告自由が丘支店の真木という営業マンが原告が電話をかけてきて、「いい話がある。新日本製鉄のワラントなのですが、ワラントというのを知っていますか」と聞くので、原告が「知らない」と答えると、「株の三倍儲かる。いつでも株に換えられて心配ない」と勧めてきた。しかし、原告は「このままでいい。日本鋼管の株も今儲けがあるから」と断った。ところが、真木は、その日、三回もしつこく電話をかけてきて、「危険がないから」とワラントを買うように勧め、三回目には「信用できないなら上司を出すから」といったため、原告は、そこまでいうなら安全で儲かるというのは本当なのだと思い、日本鋼管の株を売ってワラントを買うことを承諾した。購入後、真木がワラントを買うために、日本鋼管の株を売っただけでなく、住友精密の株も売ったことを知り、原告は真木に文句をいったが、真木から「住友の分の損などこのワラントで十分取り戻せるから」といわれて承諾した。

ワラントの買い付けを勧める電話の中で、ワラントについての説明は、右のほかにはなく、その後、被告自由が丘支店に出向いて真木にいわれるままに何枚かの書面に署名したときも、ワラントについての説明はなかった。

本件ワラントが値下がりしていることを原告が知ったのは、「時価評価のお知らせ」と題する書面が送られてきた平成二年二月のことである。この時、一〇二六万三一五五円で買った本件ワラントが六二五万三二三八円にまで落ちていることが分かった。原告があわてて真木に電話すると、真木は「大丈夫。まだまだ上がりますから」といったため、原告はそうなのかと思い、その後送られてくる「時価評価のお知らせ」記載の値が下がっても、今に上がると信じていた。

平成二年七月になって、真木から担当を引き継いだ大平から電話があり、「ワラントはもう下がる一方なので、株を買って損を取り戻すように」といってきた。原告は「安全確実と真木さんがいっていたから、ワラントは上がるはず。真木さんに会わせてください」というと「ワラントについては申し訳ありません」といい、さらに株を買うことを勧めたが、金はワラントにつぎ込んでしまい残っていないこともあって、誘いを断った。

原告は、平成四年四月二八日、売却価格二二二二円で本件ワラントを売却した。

4  被告の原告に対する本件ワラント買付けの勧誘は、投資経験がそれほどなく、貯蓄を確実に増やすことを投資の目的としている原告に対して、危険な投資であるワラントの、しかも大量取引の勧誘であり、適合性原則遵守義務に違反した違法なものである。また、勧誘時にワラントの内容・性質・仕組み等について説明しておらず、説明書・目論見書を交付したり確認書を徴求したりしておらず、投資勧誘における説明義務に違反するものである。勧誘時に、「株の三倍儲かる。いつでも株に換えられて心配ない。危険はなく絶対大丈夫」との断定的判断を提供している点で、断定的判断の提供による勧誘の禁止に違反するものでもある。

5  原告は、本件ワラントの購入により、売却価格との差額である一〇二六万〇九三三円の損害を被った。また、本訴提起の弁護士費用として、その一割にあたる一〇二万六〇九三円を要することとなった。

よって、原告は被告に対し、右合計額一一二八万七〇二六円及びこれに対する不法行為後である平成元年三月一三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否及び被告の主張

1  請求原因のうち、原告が本件ワラントを原告主張の日にその主張の価格で買い付けたこと、その当時の担当者が被告自由が丘支店の真木裕幸であり、その後、大平洋が真木から原告の担当を引き継いだこと、被告が原告に外貨建ワラント時価評価のお知らせを送付していること、大平が原告に本件ワラントの売付けを勧めたこと、原告がその主張の日にその主張の価格で本件ワラントを売却したことは認めるが、その余の事実は否認する。

2  原告は、被告自由が丘支店における甲野太郎名義の口座のおいて、昭和五四年八月二七日に取引を開始し、次のとおり、長年にわたり株式(現物取引)、転換社債、国債の証券取引を行った後に本件ワラントを買い付けたものであり、証券取引に関し十分な知識と経験を有していた。なお、原告は、本件ワラントの買付け前までに、被告との取引により、合計七二三万八三七九円の利益を出している。

3  真木は、原告に本件ワラントの買付けを勧めた際に、ワラントの性質、リスク等につき説明し、更に、被告は原告に対し、「ワラント取引説明書」を送付し、原告は、平成元年三月半ばころ、その内容を確認の上、自己の判断と責任においてワラント取引を行う旨の確認書に署名押印し、被告に差し入れた。

被告は、原告との取引において、取引成立のつど、取引報告書を作成し、遅滞なく原告に送付していた。本件ワラント取引についても取引報告書を送付している。被告は原告に対し、定期的に取引明細及び残高に関する報告書(月次報告書)を送付しており、原告は被告に対し、その取引明細及び残高を承認する旨の回答書を差し入れ、もって被告との取引及び残高を承認していた。なお、月次報告書には、本件ワラントが外国証券(アメリカドル建)であること及びその権利行使期限等が明記されており、また、回答書においても、本件ワラントが外国証券であることが明記されている。

被告は原告に対し、平成二年一月三一日作成基準日のものから、それ以降、定期的に、ワラントの時価評価等を記載した書面(外貨建ワラント時価評価のお知らせ)を送付していた。なお、この書面の裏面にもワラントについての説明が記載されている。また、平成三年八月三〇日作成基準日以降のものについては、権利行使期限等も記載されている。被告は、平成二年一二月以降、毎年一二月初旬ころ、ワラント取引の説明書を送付している。原告は被告に対し、平成三年五月二四日ころ、保有している本件ワラント等につき、その残高を承認する旨の承認書を差し入れている。

以上から、原告がワラントについて必要にして十分な知識を持っていたことは明らかである。

4  本件ワラント取引の経緯は、次のとおりである。

被告自由が丘支店の真木は、昭和六三年一一月ころ、原告の担当者となった。その後、真木は原告に対し、いくつかの銘柄の株式の買付けを勧め、原告はこれを参考にして株式の買付けをした。原告は真木の説明を聞き、自ら判断した上、買付けを断ることが何度もあった。なお、原告は被告自由が丘支店にしばしば来店し、そのつど真木と、相場状況や保有銘柄の見通し等につき話をしていたものである。

平成元年三月初めころ、原告が買い付けた住友精密株が値下がりしていたため、真木は原告に対し、電話で右株式の売付けと本件ワラントの買付けを勧めた。その際、原告は真木に対し、「ワラントとはどういうものですか」と質問したため、真木は原告に対し、株式と比べて値動きが大きいこと、権利行使期間があること、それを過ぎると権利は消滅して価値がゼロとなってしまうこと、本件ワラントは外貨建であり、為替変動によるリスクもあることなどを説明した。

このような説明に基づき、原告は住友精密株二〇〇〇株及び日本鋼管株八〇〇〇株を売り付け、本件ワラントを買い付けたものである。

5  原告が本件ワラントを買い付けた後も、真木は原告に対し、電話で連絡をとり、そのつどワラントの価格等について報告している。また、原告は、平成元年一一月二〇日ころ、住友金属鉱山株二〇〇〇株、同月二四日ころ同株二〇〇〇株をそれぞれ買い付けているが、その際にも、原告は真木に対し、本件ワラントの価格を問い合わせたため、真木は、当時の本件ワラントの時価等を報告している。その際、原告が真木に対し、ワラントの説明がなかった等の苦情を申し立てることは一切なかったものである。更に、平成二年五月ころ、真木は被告を退職するため原告に対し、あいさつをしたが、その際、原告は真木に対し、本件ワラントに関し何らの苦情も述べていなかった。

平成二年五月ころ、真木の退職に伴い、被告自由が丘支店の大平が原告の担当を引き継いだ。そのころ、値下がりを続けていた本件ワラントが、やや値を戻してきていたため、大平は原告に対し、売付けを勧めたが、原告はこれを断った。その後、本件ワラントは再度値下がりを始め、大平は原告に対し、月に一度くらい、本件ワラントの時価を報告するとともに、その売付けを勧めていたが、原告はこれを断った。平成三年五月ころ、大平は転勤し、被告自由が丘支店の神戸が原告の担当を引き継いだ。神戸は原告に対し、定期的に連絡をとり、本件ワラントの時価等を報告するとともに、そのつど売却を勧めたが、原告はこれに応じなかった。

本件ワラント取引によって生じた原告の損害は、原告の取引判断ないし過失によって生じたものである。

第三当裁判所の判断

一  原告の年齢、経歴及び生活状況

原告本人尋問の結果によれば、次の事実を認めることができる。

1  原告は、昭和一二年一一月四日生まれの女性であり、昭和二七年に中学を卒業した後、新潟県北魚沼郡において家業である農業の手伝いをし、その間、二年弱、農業協同組合購買部で売り子をしたことがあるほかは、本件ワラント取引を開始するまでに職業に就いた経験はない。原告は昭和三五年に甲野太郎と結婚した後、タイル職人である夫の仕事を手伝いながら、家事を行ってきた。夫の最終学歴も中学卒である。

原告と夫の間には、昭和三七年生まれの長男と昭和四〇年生まれの次男がある。長男は軽い脳性麻痺があり、高校卒業後、軽作業に就いている。次男は、高校卒業後、タイル職人の夫と共に働いている。

2  原告と夫は、肩書住所地に約三一坪の自宅用土地建物を所有している。平成九年五月、夫が末期の胃癌であることが分かり、その後、手術を経て自宅療養中であり、原告は家計の必要上、平成九年七月から週四日午前中、ビルの清掃の仕事に就いている。

二  原告の株式取引の経験

乙イ第五号証の六及び原告本人尋問の結果によれば、次の事実を認めることができる。

1  原告は、昭和五四年ころ、夫の同業者が株の話をしているのを聞いて興味を持ち、昭和五四年八月二七日、被告自由が丘支店で株取引を始めた。この当時、原告は四一歳であり、無職であったことから、貯蓄を少しでも増やそうと思い、夫の預金や自己の預金を使って株取引を始めたものである。同年以降本件ワラント取引を開始するまで、原告が行った株取引は、現物取引に限られ、信用取引や先物取引はしたことがない。購入する株式の銘柄の選定は被告の担当者の勧めに従ったものであり、本件ワラント買付け時までに自らが自発的に銘柄を選択したことはなく、売却時期についても、被告の担当者の勧めに従ってきたものである。

原告は、本件ワラント買付け当時、国際証券株式会社に原告名義で約三〇〇万円及び和光証券株式会社に夫名義で約一〇〇万円の株式を所有していたが、これも同様の取引により取得したものである。

2  昭和五四年八月二七日に株取引を開始した後、平成元年三月二日に本件ワラントを買い付けるまでの約一〇年間における原告の被告会社での株式買付け回数は三三回であり、そのほか、転換社債の買付けと国債の買付けが各一回ある。

これを年ごとに見てみると、昭和五七年までの三年間は買付けがごくわずかしかなく、昭和五四年に一回株式の買付けを行ったものの、昭和五五年には一回も買付けがなく、昭和五六年に京王帝都電鉄の転換社債を、五七年に国債を各一回買い付けているにすぎない。昭和五八年には年五回の買付けを行っているものの、昭和五九年及び六〇年には年一回の買付けとなり、昭和六一年も、一一月までは、二回の買付けが行われるにとどまっている。

昭和五四年に株取引を開始してから昭和六一年一一月までの七年間の一回の買付け金額は一〇〇万円以下であり、右期間中の株式の保有期間は、一年ないしそれ以上保有する場合が過半数(一二件の買付け中七件)であり、長期の保有が基本となっている。もっとも、昭和五八年の五回の買付けのうち四回は、いずれも買い付けた株を三か月以内に売却し、その代金で新たな株を買い付ける手法が取られているが、買付け金額、その前後の買付け回数、株式保有期間等に照らせば、昭和五八年の四回の短期売買が原告に固有の投資傾向というわけではないことが見て取れる。

この間に投入された資金の額は、昭和六一年一一月までは、一八〇万円以下であり(昭和六一年一一月の時点では、六四万一九二五円で購入した日本ソーダ株、七五万九三七五円で購入した小田急電鉄株、三七万五六三七円で購入した東京電力株を保有していたにすぎない)、売付けによって生じた資金で新たな株式を買い付けることの繰り返しであり、七年間の売買による利益は六八万四二二一円にとどまっている。買付け銘柄は主力株が中心である。

このように、昭和五四年から昭和六一年一一月までの七年間の株取引の状況を見る限り、原告の投資状況は、総額一八〇万円に満たない資金で株式、転換社債、国債を購入して資産として長期間保有し、いくらかの値上がり利益を期待するという程度のものであったと認められるのであり、主婦が夫と自己の若干の蓄えを堅実に運用する目的で、証券会社の営業担当者の勧めに従って、比較的安全な銘柄を中心として株式等の買付けを行い、これを長期間保有し、被告の営業担当者に勧められると適宜売却をして、その担当者の勧める堅実な銘柄の株式を購入していたものと評価することができる。

3  ところが、原告は、昭和六一年一二月に新たに約三〇〇万円の資金を投じて株式の買付けを行っており、金額的にみて、これまでとはやや違った投資行動を見せている。そして、昭和六二年八月二八日以降、原告の投資傾向は、従来とは一変するに至っている。すなわち、昭和六二年八月二八日から九月一八日までのわずか三週間の間に五回の買付けを行っており、買付け金額の合計額は七三五万二二七〇円に上り、一回の買付け金額も一〇〇万円から二〇〇万円余となり、新たに投入された資金も五〇〇万円以上に上っている。その結果、昭和六二年末の時点での投入資金総額は一〇〇〇万円余りに急増している(購入価格総額一〇三三万五二四五円の株式を保有)。昭和六三年には買付け回数がさらに増え、年一四回の買付けとなっており、一回の買付け金額も三〇〇万円前後の取引が中心となっており、昭和六三年末の時点での投入資金は一八〇〇万円程度(購入価格総額一八〇七万四八二八円の株式を保有)となっている。これに伴って売付け回数も増えており、昭和六二年が年四回、昭和六三年が年一三回となっている。また、昭和六三年になって、株式の保有期間が顕著に短くなり、一か月から五か月の保有期間で売却するものが大半となり、一年間の利益も四六二万七三四〇円に上っている(取引手数料込みの金額)。このように、昭和六二年八月以降、原告の株式の投資傾向が一変したものの、相変わらず、原告が銘柄を自分で選択することはなく、すべて被告の営業担当者の勧めに従った買付け、売付けがなされており、買付け銘柄が主力株中心であることも変わりがない。

4  原告は、その本人尋問において、本件ワラント買付けの二年くらい前から頻繁に株の売買を勧められたこと、それは担当者が真木の前任の中野という者に変わったころからであること、頻繁な売買は原告の希望するところではなく、そのような勧めに嫌気がさして、このころ、何度か売買の勧めを断ったことがあることを述べており、弁論の全趣旨によれば、中野が原告の担当となったのは昭和六二年八月であり、昭和六三年一一月に真木に引き継がれていることが認められる。

右に認定した昭和五四年以降七、八年の投資傾向及び昭和六二年八月以降の投資傾向の著しい変化からすると、原告の右供述は信用できるのであり、昭和六二年八月以降の著しい投資傾向の変化は、被告の営業担当者が原告に積極的投資を鋭意勧め、原告はその勧めに従って新たな資金の投入と売買を行ったことによるものであったと考えられる。このことは、原告が平成元年三月二日に本件ワラントを買い付けた後、同年一一月に二件の株式を買い付けるまで、全く株式を買い付けておらず、同年一二月以降の買付けは皆無であり、被告の営業担当者からの積極的働きかけがない場合には原告は積極的投資行動に及んでいないことからも、裏付けられているといえる。右平成元年一一月の二件の株式購入は、原告が被告の主催する株式投資説明会に出て、資産株として良い銘柄であるとして推奨されたものを買い付けたものであり、これが原告自らの選択した初めての銘柄であり、長期保有を目的とする原告の希望にかなったものとして選択されたものである。

5  被告は、原告が本件ワラント買付け前の約一〇年間の株取引で七二三万八三七九円の利益を上げたことを強調する。しかし、右約一〇年間に原告が得た利益は六九一万一九一一円(被告が平成元年一一月二〇日の売却益三二万六四六八円を算入しているのは誤り)であり、そのうち六二二万七六九〇円は、被告担当者が短期売買を集中的に勧めた昭和六二年八月以降の約一年七か月の間に計上されたものであり、それ以前の七年間における利益は、六八万四二二一円であったにすぎない。したがって、原告が右のような利益を上げたからといって、株式売買に堪能な顧客であったとは到底認められない。

6  なお、原告と同居していた夫その他の親族が株式取引の知識経験を有していたという事情はなく、原告の知人で原告に株式取引に関する助言をしていたような者もいない。

三  本件ワラント取引に至る経緯

甲各第五号証の三の一、二、乙イ第五号証の三ないし六及び原告本人尋問の結果によれば、次の事実を認めることができる。

1  被告自由が丘支店の真木は、昭和六三年一一月、原告の担当者となった。平成元年二月末、真木は原告に電話をかけてきて、「ワラントというのを知っていますか」と聞くので、原告が「知らない」と答えると、「株の三倍儲かる。いつでも株に換えられて危険はない。日本鋼管の株を売って買ったらどうか」と勧めてきた。この誘いに対して、原告は「このままでいい」と断った。ところが、真木は、その日、更に二度にわたり電話をかけてきてワラントを買うように勧め、三回目にかけてきた電話で、「信じられなかったら上司を出しましょうか」といったため、原告は、そこまでいうならいいものだろうと思い、日本鋼管の株を売ってワラントを買うことを承諾した。

2  原告は、右ワラント購入後に送付されてきた取引報告書を見て、真木がワラントを買うために、日本鋼管の株を七四一万七六三六円で売っただけでなく、住友精密の株も三四四万四二五〇円で売ったことを知り、原告は真木に文句をいった。真木が売却した住友精密株は、二五万三六九〇円の損を出しての売却であった。これに対して真木は「住友の分の損などこのワラントで十分取り戻せるから」といい、原告は右売買を承諾した。

真木が原告にワラントの買付けを勧める電話の中で、ワラントについての説明は、右1及び2の内容のほかには原告に理解できるような事項はなく、その後、原告が被告自由が丘支店に出向いて真木にいわれるままに何枚かの書面に署名したときも、真木から原告に対し、ワラントに関する原告に理解できるような説明はなされなかった。

3  本件ワラントは、当時原告が保有していた株式のうち、買付け価格合計八六四万一五〇〇円のものを残すのみで、合計一〇八六万一八八六円相当の株式を売却することにより買い付けられたものである。

四  真木の供述の信用性の検討

1  証人真木は、原告に本件ワラントの買付けを勧めたのは、住友精密株の値動きがかんばしくなかったためであると供述する。

そこで、右供述の信用性について検討するに、乙イ第五号証の六によれば、住友精密株が値を下げたといっても、平成元年一月一二日の購入価格一株一八三〇円から同年三月二日の売却価格一株一七五〇円まで下げたにすぎず、その値下がりの程度は、約二か月の間に一株あたりの価格にして八〇円、割合にして四・四パーセントであり、原告の購入株数である二〇〇〇株全体での損失額も、わずか二五万三六九〇円にとどまることが認められる。また、同号証によれば、真木が原告を担当した昭和六三年一一月以降本件ワラント買付け時までの約四か月の間に、売却により損が出たのは、右住友精密株及び平成元年一月一二日売却のクボタ株(一〇万七五五四円の損失)であることが認められる。このことと真木の右供述を合わせ考えると、真木は、原告についての担当者となった昭和六三年一一月以降、原告が保有している株の値動きに細心の注意を払っており、数十万円単位のわずかな損も出ないよう努めていたかのように見える。

ところが、真木は、平成二年五月に被告会社を退職するまで原告を担当しており、平成元年四月七日以降、本件ワラントは値下がりを続け、既に平成元年六月には買付け時の六割近くにまで値を下げている状況にあるにもかかわらず、原告に対して本件ワラントの売却を勧めていないのであり、このことは、住友精密株の値下がり傾向に敏感かつ迅速に対処したとする真木の右供述と矛盾する。真木は、住友精密株の購入を原告に勧めたのは、平成元年一月一二日当時の同社の業績が良かったからであると述べている(証人真木の速記録六頁)が、売却を勧めたという同年三月二日にも同社の業績の良さは変わっていないというのであり(同証人の速記録八六頁)、この点も不可解である。真木は、原告に対して本件ワラントの購入を勧めたのは、新日本製鉄の業績が好調だったからであると述べ、その売却を勧めなかったのは、右のとおり株式市況が上昇傾向であったことに加え、業績の好調である状態に変化がなかったためであり、一時的に株価が下がっても、また株価が戻すことによってワラントの価格も回復が期待できると判断したと述べる(同証人の速記録八六頁)が、この事情は住友精密株においても全く同じなのであり(同証人の速記録八四頁)、この点からも、真木の前記供述は不可解というほかない。本件ワラントの買付け価格は一〇二六万三一五五円であるのに対し、住友精密株の売却価格は三四四万四二五〇円であり、右住友精密株の売却と同時に、一六七万七六三六円もの利益が出ている日本鋼管株を七四一万七六三六円で売却し、両売却代金を合わせて本件ワラントを買い付けており、価格的にみても日本鋼管株を考慮の中心とするのが自然であると思われるのに、真木は、住友精密株の値動きがかんばしくないことを原告に説明したのみで、日本鋼管株の売却の理由を説明をしたとは述べていないのであり、この点も不可解である。

真木の供述には、右のとおり信用性に大きな疑いがあり、一方、原告の供述には不自然な点は何もない。したがって、住友精密株の値下がり傾向に対処するために本件ワラントの買付けを勧めたとする真木の前記供述は、信用することができない。

2  真木は、原告に本件ワラントの買付けを勧めるに際し、電話で二、三〇分かけて、ワラントのハイリスク・ハイリターン(儲けも多いが損失を被る危険も大きい)の特色及び権利行使期限の内容(権利行使期限をすぎると紙くず同然になること)等について十分な説明をし、原告もその内容を理解したと供述しており(証人真木の速記録一三頁)、ワラントの内容については「株の三倍儲かる。いつでも株に換えられて危険はない」という説明のみであったする原告の供述と顕著に対立している。

そこで検討するに、原告は真木からの勧誘によって、買付け後七か月足らずで購入価格の二九パーセントに相当する大きな利益が出ていた日本鋼管株を売却し、その資金を主たる資金として本件ワラントを買い付けたものであり、この事実自体からみて、真木の説明は、本件ワラントが右日本鋼管株と対比しても、それを上回る多額の儲けが期待できる商品であるとの内容であったことが推認できるのであり、この事実と、前記一及び二認定の原告の知識、経験、株式取引状況を合わせ考えると、ワラントがハイリスク・ハイリターンの商品であるとの説明及び権利行使期限を過ぎると紙くず同然になるとの説明を受けただけで、原告が日本鋼管株を売却して本件ワラントを購入することを承諾したものとは考えられないのであり、真木は本件ワラントが株を大きく上回る儲けの期待できる商品であるとの説明をしたものであることが推認できる。しかも、真木は、原告がワラントに関して何ら予備知識を持っていないことを知りながら、買付け当日、電話によって本件ワラントの買付けの勧誘を行い、他に何の資料も提供していないのであり(証人真木の速記録一一頁)、ワラントの内容が、株取引に堪能な者以外には、容易には理解しがたいものであることを合わせ考えると、わずか二、三〇分の電話だけで、原告が直ちに買付け注文を出せる程度に本件ワラントの内容を理解したものは、およそ考えられない。これに加えて、真木の供述には、右1のとおり信用できない部分がある。一方、原告は、株式説明会に出席した回数など、事前に原告代理人から開示されていない原告に不利と思われる情報についても、被告代理人の質問に答えて進んで話している(原告本人尋問の速記録六九・七〇頁)のであり、このような一貫した原告の供述姿勢から見て、原告の前記供述は信用することができる。

なお、真木は、原告が郵送された乙イ第五号証の四の説明書末尾に添付された乙イ第五号証の五の確認書用紙を切り取り、これに必要事項を記載して、平成元年三月中ごろ被告あて提出した旨供述する(証人真木の速記録四五頁)。しかし、右確認書中の「ご署名、ご捺印の上ご返送下さい。」とのゴム印記載部分は、原告代理人が真木の証人尋問において指摘するとおり(同速記四七頁)、ゴム印を押した直後に折りたたまれた形跡が認められるのであり、この事実は、真木の右供述と矛盾する事実である。

したがって、原告に本件ワラントの買付けを勧めるに際し、ワラントのハイリスク・ハイリターンの特色及び権利行使期限の内容等について十分な説明をし、原告もその内容を理解したとする真木の前記供述は、信用することができない。

五  本件ワラント買付けの勧誘の違法性

右認定事実によれば、原告は、最終学歴中学校卒の女性であり、本件ワラント買付け当時五二歳であり、中学校卒業後、農業を手伝ったこと及び二年弱の間、農協購買部の売り子をしたことがあるほかは、本件ワラント取引開始までの間、特に職業に就いたことがなく、結婚後主婦として家事を行っていた者である。原告は、本件ワラント買付けの約一〇年前から株取引を行ってきたものの、昭和五四年から昭和六一年一一月までの七年間の原告の株取引の状況は、夫と自己の若干の蓄えを堅実に運用する目的で、証券会社の営業担当者の勧めに従って、比較的安全な銘柄を中心として買付けを行い、同じく営業担当者の勧めにより、適宜売却をしていたものであり、株式購入の目的も、長期間資産として保有することを主眼としたものであった。このように、原告の株取引は、長期間の取引歴がある割には至って堅実であり、投機的色彩の薄いものであったといえる。昭和六二年八月以降、原告の投資傾向が一変し、買付金額が多くなり、投資資金も急増して一〇〇〇万円を越えるようになり、株式保有期間も短くなっているが、これは被告の担当者が原告にそのような取引を強く勧め、これを原告が結果として承諾したことによるのであり、むしろ原告はそのような取引に嫌気がさしていたものであり、現に、本件ワラント買付け以降、被告担当者の勧めがなくなると、原告は平成元年一一月にわずかに二回の買付けをしたのみで今日に至っている状況にある。

一方、平成元年三月二日の本件ワラントの買付けは、過去一〇年間の一回の最高買付け額である三九四万余円の二倍を超え、しかも、当時原告が保有していた株式のうち、買付け価格合計八六四万一五〇〇円の三井不動産株一銘柄を残すのみで、一〇八六万一八八六円相当の株式二銘柄を売却することにより買い付けたものであり、手持ち株式の過半をつぎ込んだ買付けであり、過去にこれほど多額の買付けを一時に行ったことはなかったものである。原告は、この前後を通じ、本件ワラントの他には、ワラントの買付けをしたことがない。

このように、原告はワラントを購入する適性が十分であったとはいえない者であり、このような者にワラントの買付けを勧める場合には、証券会社の営業担当者としては、ワラント取引のハイリスク・ハイリターン(儲けも多いが損失を被る危険も大きい)という内容を十分説明した上で、自発的に購入する意思を持つに至ったかどうかを慎重に見極める必要があったものといえる。ところが、被告は、前記三認定のような経過により原告に本件ワラントの買付けを勧めたのであり、被告の本件ワラントの買付けの勧誘の際の原告への説明は、不十分かつ不適当であったというべきである。

したがって、被告の原告に対する本件ワラントの買付けの勧誘は、原告の証券取引特性に適合しない違法なものであり、このような勧誘をした被告には過失があるものというべきである。

六  被告が賠償すべき原告の損害

1  原告は、本件ワラントを一〇二六万三一五五円で買い付け、二二二二円で売却したことにより、一〇二六万〇九三三円の損害を被ったものであることは当事者間に争いがない。

原告は、平成二年二月始めころ、被告から本件ワラントの価格を記載した平成二年一月三一日付け「外貨建ワラント時価評価のお知らせ」の送付を受け、この時点で本件ワラントに大きな損失が生じていることを認識したものである(原告本人尋問の結果)。このとき、原告は真木に電話し、その事情について尋ねたが、真木から、持っていればそのうちに値上がりするといわれ、そのままにしていた旨供述する。原告の従来の投資傾向及び当裁判所における供述姿勢から見て、原告の右供述は信用できるのであり、この時点で原告が本件ワラントの売却を決断しなかったからといって、原告に損害拡大防止をしなかった過失があるとまで評価することはできない。その後、平成二年五月ころ、真木の後任である大平が原告に対し、本件ワラントの売却を勧めたが、原告はこれを断っていることが認められる(弁論の全趣旨)。しかし、右売却を勧められた時点では、本件ワラントの価格は、購入時に比べ、ドル価格で四〇パーセント程度にまで下落しているのであり、原告が本件ワラントの買付けを承諾した前記三認定の事情からして、それまで堅実な投資に務めてきた原告が、右の時点でワラントを売却し損を小さくとどめようと決断するのが困難なほどに困惑していたことは、想像に難しくないのであり、このように原告を困惑させた原因が被告担当者による著しく適切さを欠くワラント買付けの勧誘行為にあったことも合わせ考えると、原告がこの時点で本件ワラントを売却しなかったからといって、原告に損害の拡大を防止をしなかった過失があるとまで評価することはできない。

したがって、本件ワラントの買付け価格と売付け価格の差額である一〇二六万〇九三三円全額が、被告の前記不法行為と相当因果関係にあるものといえる。

2  原告は、被告の右不法行為による損害賠償の請求ををするため、弁護士に委任して本件訴訟を提起したものであり、本件訴訟の困難の程度にかんがみると、原告が弁護士費用として請求する一〇二万六〇九三円全額が被告の右不法行為と相当因果関係にあるものと認めるのが相当である。

3  右1及び2によれば、被告は原告に対し、右不法行為による損害賠償として、一一二八万七〇二六円及びこれに対する平成元年三月一三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

七  過失相殺の可否

被告は、原告に対する本件ワラント買付けの勧誘の際に担当者である真木がワラントのハイリスク・ハイリターン性について十分説明した旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない(右主張に沿った真木の証言は、前記四認定のとおり信用できない)。原告は、本件ワラント取引に際し、ワラント取引を自己の責任において行う旨の確認書を提出している(乙イ第五号証の五)が、前記一及び二認定の原告の知識、経験、株式取引状況及び真木の前記三認定の説明内容並びに前記四の2認定の事実から推認される右確認書作成の時期及び方法に照らせば、これを考慮して原告に生じた損害額を減額するのは適切ではない。また、被告は、原告が被告担当者が勧める銘柄の株式の買付けを断ったこともあると主張するが、原告本人尋問の結果によれば、それは昭和六二年八月以降、原告の希望に反して被告担当者である中野が頻繁な売り買いを勧めるため、嫌気がさして断ったものであることが認められ、これも原告の過失の要素として考慮することができないものである。本件ワラントに関する取引報告書には、本件ワラントが外貨建であること及び権利行使期限が平成四年七月一四日であることの記載がある(甲各第五号証の三の一、二)が、このような記載があるからといって、前認定の原告の知識、経験、株式取引状況及び真木の前記説明内容等からみて、これを注意深く見なかった原告に過失があるとはいえない。

なお、被告は、本件ワラント買付け直後に乙イ第五号証の四の説明書が原告に郵送され、その末尾に添付された確認書に必要事項を記載した乙イ第五号証の五が原告から被告あて提出された旨主張し、証人真木は同旨の供述をするが、真木の右供述が信用できないことは、前記四の2認定のとおりである。右事実並びに原告の知識、経験、株式取引状況及び真木の説明内容等からみて、右説明書に本件ワラントの性質に関する記載があるからといって、これを原告の過失の一要素とすることはできない。

被告は、平成二年五月ころ以降、被告の担当者が本件ワラントの売却を勧めたのに、原告はこれを断った旨主張するが、このような本件ワラント買付け後の原告の対処の仕方を損害賠償額減額の要素とすべきでないことは、前記六の1記載のとおりである。

したがって、本件について原告の過失を考慮して被告に賠償を命ずる額を減額することはできない。

八  結論

以上のとおり、被告は原告に対し、不法行為に基づく損害賠償として一一二八万七〇二六円及びこれに対する不法行為後である平成元年三月一三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるものというべきであるから、原告の請求は理由があり、これを全部認容すべきである。よって、主文のとおり判決する。

なお、付言するに、当裁判所は、平成九年二月三日、職権で本件を当庁の調停手続に付した。右職権付調停は、民事調停法二〇条の規定に基づくものであり、しかも、平成六年二月八日の第七回口頭弁論期日以来、当裁判所と口頭弁論分離前の全原告及び全被告との間で、繰り返し口頭弁論期日及び打合わせ期日をもって意見交換をしながら手続の進行について協議を重ねてきたものであり、本件を職権で調停に付したのは、それから約三年を経過した平成九年二月のことであった。ところが、被告は、「被告の調査によれば、本件の事案のなかに、現段階で、「事故」(証券取引法五〇条の三第三項)として顧客の損失について金銭を支払うことが許される事案はない」(平成六年四月二二日付け被告意見書)との意見に基づき、当庁の調停委員会に対し、「調停による中途半端な結論には証券取引法との関係で問題がある」(平成九年五月三〇日付け被告意見書その一)、「一方当事者が、憲法上公開が保障されている訴訟手続を求めているにもかかわらず、裁判所が専断的に事件を調停に付した上、手続を非公開とすることは、憲法八二条一項の精神を踏みにじるものであり、到底許されることではない」(平成九年五月三〇日付け被告意見書その二)等と述べて、調停委員会が事実の認定及び意見の表明をすることに反対し、調停手続における調査に任意の協力をしなかった結果、同年五月三〇日、右調停委員会は、調停が成立しないものとして調停事件を終了させたものである。その後、当裁判所での審理が再開し、本件判決に至ったものであるが、被告の右見解は、当事者数等からみた本件事件の特殊性並びに当庁の裁判官及び調停委員によって構成される公正な第三者機関である調停委員会の手続を理解していないものといわざるをえないのであり、口頭弁論分離前の共同被告である被告以外の全ての証券会社が、本件事件の右特殊性にかんがみ、職権付調停の手続に理解を示して行動していることと、証拠によって認定した本件の事実関係が前記のとおりであることを合わせ考えると、被告には、公正な第三者の意見に耳を傾けようとする心構えに欠けるところがあるものといわざるをえない。

当裁判所は、職権によって付した当庁の調停手続に対する被告の右見解を容認するものでないことを、念のために付言する。

(裁判長裁判官 園尾隆司 裁判官 永井秀明 裁判官 瀬戸さやか)

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